アラス 『アラス』

Atlas'主役の一人

作者:大川
特徴:吸血鬼
武器:両刃のスピア
魔法:水の精霊

Atlas' characters――――――――――――――――――――――――――――アラス

「……また会ったわね」
アラスの目の前にある女が立っている。以前、京都近くの草原にある泉で会った女だ。
「……姉ちゃん……瑠璃って言ったっけ」
「ええ。でも本当は水瑠璃って言うのよ。この名前なら知っているでしょう?」
その名をきいてアラスの目付きが変わり、瞬時に警戒態勢へと入る。
「警戒しないで。何もするつもりはないわ。確かに私は北方四天王だけど」
水瑠璃は着物の袖を直し、上品に笑った。
「その四天王にもなったばかり。で、人手が足りないの。だからあなたが欲しいのよ……
私の側近に。別に賞金首でもかまわないわ。関係ないもの、そんな事は私には」
彼女は他とは違い、世襲制で四天王となった訳ではないのだ。それ故部下も少なかった。
「オレみたいな黒レベル程度の吸血鬼が、役に立つとは思えないけどね……」
腰から少し力が抜けた。立つのもやっとだ。血が必要な事を頼也達に悟られれば、不安が
られるかもしれない。そう思ったのであまり顔には出さないようにしていたが、その最近
の無理がたたっている。少女を追いかけた時も本当は、賞金狙いの魔族なら以前のように
血を頂こうと思ったのだ。
 ―どうして頼也達に不安がられたくなかったのかは、わからなかった。頼也達が不安に
思うとすれば、自分が考えているような事にではないというのが、何故か何処かでわかっ
ていたけれど。
「相当辛いみたいね。魔族の血をいくら頂いても、人間の血の精気の量には中々及ばない
もの……すぐに足りなくなるんでしょう?」
アラスは何も答えなかったが、苦しげな表情が、全くもってその通りである事を表して尚
余りある。
「まぁ、今日は話をしたかっただけ。今すぐ決めろとは言わないわ。じゃあね 」
水瑠璃は建物の陰の、更に奥に消えていった。




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