今にもイエローの命の灯が消えようとしている中。ワタルの姿は、既に場になかった。
レッド達の事など、どうでもいいと思っているのか…。
 代わりに場に現れたのは、ホアンにまかれて帰ってきたゴールドだった。

「―!? クリス、何ぼけーっとしてんだよ、てめぇ!!」
ゴールドがレッド達の方に駆け寄りつつ、殊更に敢えて声を荒げる。
「あっ…ゴールド…」
「しっかりしろっつーの!! いいから突っ立ってないで早く出せよ!! アレストボール!!」
「え? …―あっ…!!」
ようやく生気を取り戻したクリスが、きっとした目で道具袋を取り出す。
「アレストボール…? 俺を捕まえようとしたあの…」
何をする気だ!? と当惑した顔でレッドが振り返る前に、クリスは思い切り、そのボール
を蹴り放っていた。

 勢い良く飛んでいったボールは、イエローに当たると。その身をまるごと、ボールの中
に保護していたのだった。

「…!!??」
「これでしばらくはイエローさん、もつはずです! 治療の出来る所へ急ぎましょう!」
ボールを拾い、大事そうに抱え込むクリス。ようやくレッドは思い当たった。
「そっか…ポケモンと同じ、ボールの中にいる間は状態が変わらないようになってるのか。
って事は…!」
ひょっとしたらまだ、間に合うかもしれない。まだイエローを助けられるのかもしれない。
もしもあのまま、傷ついたイエローを野晒しにしていたのなら…イエローの命は後数分で
尽きていた事だったろう。
 人間を捕獲するアレストボール。本来は犯罪者などを捕まえるためのものだが、こうい
う用途も場合によっては可能なのだ。

「ありがとう、ゴールド…ゴールドが帰ってこなかったら、私…」
おずおずと顔を上げて、伏目がちにゴールドを見るクリス。ゴールドは適当に、
「全く、これだからクールな俺様がついてなきゃな!」
と、本気で威張っているのか、照れ隠しなのか何なのか。曖昧な態度をとっていた。

「とりあえず、一旦トキワの町まで退きますか? 一番近い病院に、一刻も早く連れてい
かないと…」
クリスのその提案に、レッドがうなずこうとした時だった。
「何言ってんの! 人間があれだけ高位のポケモンの攻撃を受けて、ただで済むわけがな
いでしょーが!」
場に。威勢の良い声と共に、彼女が降り立っていたのだった。

「ブルー…お前、無事だったのか!」
レッドが驚きの声をあげる。そんな声も軽く受け流し、ブルーはずかずかと近寄ってくる。
「当たり前よ。アタシをさらったナツメがトキワへ戻って、何故か四天王の長、ワタルも
不在だったからね」
それで見張りの目を何とか誤魔化し、自由の身になっていたブルーだった。
「とにかく話は後よ! イエローが心配だわ…あの傷じゃ、次にアレストボールから出し
た直後に死んでしまう。治療なんて言ってる暇もなくね」
ずかずかと現実を口にするブルーに、レッドがぐっと言葉を詰まらせる。
「じゃあどうすれば、イエローさんは助かるんですか!? ブルーさん!」
平常心でそこまで厳しく言うからには、打開策も思いついているはず。そう信じた上での
クリスの問いだった。
「…確実じゃない。でも、イエローを助けるにはたった一つしかない…」
ブルーはちらりと一瞬だけ、辛そうな目をした。こんな事態はおそらく、彼女も予想して
はいなかったのだろう…クリスが大事そうに抱えるアレストボールを見て、眉間にしわを
よせる。

「―アタシについてきて。ここに来るのが遅れてしまったのは、“彼”を見つけるのが一
苦労だったからなのよ」
そう言ってブルーは、森の奥に向かって駆け出した。レッド達も無言で、その後を追った。

                                       *

「…ほう? 我らの最終目的の一部が、彼らには既に知れていると…そう言うのかい?」
暗く深い森の奥。“研究者”と“その契約者”は、おそらく最後になるだろう打ち合わせ
をする。
「カツラを逃した時点で、俺達の内情はあらかた伝わっている。そこから情報を集めて俺
達の目的を推察する事ぐらい、あのマサラ国王の孫なら可能だろうよ」
マサラ国王。その名をきいた時、“研究者”のまとう雰囲気が怒りを含んだものへと変わ
る。
「マサラの血を調べる事に対し、散々私の邪魔をしてくれたあの男と、その孫…でも今度
ばかりは、そうはいかない。―わかっているね? ワタル」
「当たり前だ。寧ろ彼らは知るが故に、己の首を絞めるはめになる。…これからが見物だ
…もうすぐ、お前の目的は完全に果たされる」
“研究者”が持つ丸い円盤のような道具を見て、皮肉げに“その契約者”は言い切ってい
た。
「フェッフェッフェ……その後に、アンタの目的も果たされる事を、祈っているよ。私は
私の研究が完成した姿をさえ見られれば、それでいい。人間、そしてポケモンを越えた存
在を造ること…それさえ果たせれば…」
そうして、彼らの暗い祈りは止む時を知らず…全ての歯車が動き出す時が、やってくる。

                                       *

「うわぁぁぁ!? 何や何なんや、お前らー!!?」
「って…何でお前がここにいるんだよー!!?」
ブルーに導かれて辿り着いた小屋では、そこにいた若者と連れて来られた連中が、共に派
手な驚きの声をあげる。
「マサキさん!? あなたずっと行方不明だったのに、こんな所にいたんですか!?」
「うっそ!? クリスの目的のもう一人がいたのかよ!?」
ああ、もう…。ブルーが騒がしさに頭を抱える。
「レッドとブルーはともかく、お前とお前は誰なんや!? 全員四天王に捕まったんか!?」
「違う、俺達は四天王と戦いにここまで来たんだ。でもそれより、ブルー!」
どういう事だ? と、レッドがブルーをきつい目で見る。
「…見ての通り。マサキは四天王に捕まってたってわけ。彼の研究が生み出した思わぬ副
産物を、四天王が利用するためにね」
副産物…? ブルーとマサキ以外が首を傾げる。それとイエローを助ける事に、一体何の
関係があるのだろうかと。そもそもその副産物とは、何なのかも。
「グリーンは四天王の目的をこう見たわ。マサラの血とトキワの血が必要…そして行方不
明なマサキ。カツラさんからの情報で、マサキらしき人間が四天王に捕まっているのがわ
かった。それはおそらく、ある生物兵器を造り出すための、四天王の策略なんじゃないだ
ろうかって」
「ある…生物、兵器?」
「四天王の支配を広げるための力。ポケモンと人間のキメラ…合成獣よ」

 ―何だってぇぇぇ!? 場にいた事情を知らない全員が、叫び声をあげた。

「合成獣って…ポケモンと、人間の!?」
「そんな事が可能なんですか!?」
「っていうか意味あるのかよ、そんな事して!?」
3人が驚くのも無理はない。ブルーだって初めは信じられなかった。…が。
「レッド。あんたは知っているはずよ。以前に、ポケモン転送の事故によって、マサキと
コラッタが融合してしまった事があるという事実を」
そういう事件が過去にあったらしい。本編ネタだがこの世界でもそういう事にしておいて
ほしい(独り言)。
「わいは四天王に捕まって、その融合に関する研究だけを強制されたんや。今じゃもうそ
れは、最終段階にきとる」
転送という技術を開発したマサキには、思わぬ災難だったろう。
「その融合レベルを調節する事によって、ポケモンの力と人間の頭脳を持った生物を造り
出す。人間側の合成材料として選ばれたのが、マサラとトキワの人間なの。何故なら…」
マサラに生まれた人間は、ポケモンと心を通わせやすいという素質を持つ。そしてトキワ
にはイエローのように、不思議な能力を持った人間が存在する。
「彼らは優れた合成獣を作って、自分達の支配下に置く気なの。トキワに攻めてきたとい
う事は、トキワの王座という権力を手に入れて、その部下として合成獣達を起用する……
そういったところでしょうね、おそらくは」
淡々と語るブルーの言葉が真実なのだと、レッド達は理解しないわけにはいかなかった。
マサキがここにいる事。それが何よりの証拠だったからだ。

「四天王の目的はわかった。でも、それがイエローを助ける事と、何の関係があるんだ?」
レッドが焦り顔で尋ねる。ブルーはマサキに簡単な状況説明をした後、準備を始めるよう
にと指示を出した。
「準備って…何の?」
「レッド。このままだったら、イエローは死ぬわ。確実にね」
「…っ!!」
「人間があれだけ高位のポケモンの攻撃を受けて、生きられるはずがないの。それはポケ
モンを知るあなたには、わかっている事のはずよ」
生物としての強度は人間とポケモンでは、断然ポケモンの方がランクが上だ。そもそも両
者は、対等な存在にはなりえない…人間とポケモンでは初めから、勝負にならないのだ。

「…だから。イエローには、人間を超えてもらうしかない」
「―え?」
「イエロー自身ではあの傷の克服は期待出来ない。だったら、より強い生命エネルギーを
持つものの力を借りるの」
まさか…と、レッドは言葉を詰まらせた。クリスとゴールドも事情がわかったようで、顔
を見合わせる。

「イエローとポケモンのキメラを作るわ。それ以外に、イエローを助ける方法はない」
ブルーはわざと、感情を殺して淡々と言った。3人はその場に立ち尽くした。


「キメラって………つまりは、合成獣だよな」
「ええ」
沈黙を破って落ち着いた声を発したのはレッドだった。彼の目には、ある覚悟が浮かんで
いた。
「そんな事をして、イエローは本当にイエローでいられるのかよ?」
「…わからないわ。この技術はまだ、最終実験が済んでいないみたいだから。イエローが
自分の我を保てるかどうかは、何とも言えないのが正直なところ」
最終実験。本当に人間とポケモンの、意図通りの合成獣は造る事が出来るのかどうか…。

「まだ人間でのテストが済んでいないの。…やってくれるわね? レッド」

 ゴールドとクリスが「えええええ!!?」と、何度目かの叫び声を同時に発していた。
「そ、それってつまりは…レッドさんを、レッドさんとポケモンを、まず融合させるって
事ですか!?」
「マジかよ!? ほんとにそれしか方法はないってのかよ!? …―!?」
焦る2人を、レッドが制止する。レッドは苦しい顔をして笑うと、ブルーの方に向き直っ
た。
「…俺はイエローを、守ってやれなかった。それでイエローが助かるかもしれないなら…
やってくれ。ブルー」
 …レッドの覚悟を知って、クリスとゴールドは何も言えなくなった。うなずくブルーの
目にも、隠し切れない苦々しさが強さの裏側に浮かんでいた…。



 ―そうして。それは、始まった。


「いい? 今あなた達が持っているポケモンの中で、一番強いと思えるものをイエローと
融合させる。レッドはまた別の、それでも確実に強いポケモンと融合させるから」
先程のトキワ城での戦いで敵から奪取したポケモンも含め、全員の持つポケモンを検分し
て、ブルーは2つのボールを手にとった。
 一つはフリーザー。もう一つは、プテラだった。
「伝説ポケモン程の生命力なら、多分イエローも助かると思う。レッドの方はある程度、
レッドと意思の通じてるコがいいわよね?」
ああ、とレッドがうなずく。ブルーの選択に文句はないようだった。
「じゃあ始めるわよ。転送装置に入って、レッド」
2つの転送装置の、片方にレッド。もう片方にプテラを設置する。

 そして。合成を開始するためのレバーを、ためらいなくブルーはガチャンとひいた。

 ヴンッ………ガガガガガガガ…ザザザザザ………。
 転送装置特有の電子機械音と、TVのノイズのような音が小屋中に響く。
「…あれ? 何やえらい、時間かかんな…」
マサキが首を傾げる。ノイズが発されるだけの期間がずっと続いており、なかなかそれは
止もうとしなかった。

 そうしてやっとノイズが止んだ後に、2つの転送装置の中央に設置された装置上に……
完成されたキメラが、転送されたのだった。

「レッドさん! 大丈夫ですか!?」
クリスが中央の装置に駆け寄る。ゴールドもそれを追って、中央に現れたレッドらしき者
の所まで駆けていく。
 そこにいたのは…プテラの翼と尻尾を持った、レッドだった。
「―調子はどう? レッド」
「―え? …? …あ、ああ…」
レッドは融合の影響か頭がぼーっとしているようで、声をかけてきたブルーの方を不思議
そうに見た。
「何も可笑しな所はない? イエローの方、もう始めるわよ?」
「あ…うん。俺は、大丈夫…だ」
それを聞いて、ゴールドとクリスがほっと胸をなでおろした。
 イエローの入ったアレストボールとフリーザーも、レッドの時と同じように転送装置に
設置された。レッドはまだ頭がはっきりしないようで、隅の椅子に座って休んでいる。
「これでイエローさん、助かるんだよね。…ね、ゴールド」
「ああ。…そんでその後、四天王と決着をつけるんだ」
厳しい表情で言うゴールドに、クリスも同じような顔でうなずいた。2人共、これがまだ
まだこの戦いの序盤である事を、決して忘れてはいなかった。

 そして中央の装置の上に。合成された生物がどんどんと…形を成していく…。


「……アレ? …………ボク………?」


 ―全員が思わず。一瞬、その姿に見惚れてしまった。

 フリーザーの翼と尻尾を持ち、氷の結晶を周囲の空気にまとうイエローは……まるで。
 本物の天使がこの場に降臨したかのような。そんな錯覚を、全員に覚えさせていた。
 イエローはわけがわからないといった顔で、ぼーっと自分の手を見つめていた。


 しかし。そんな感慨に浸る間もなく……。

「―!!! ―みんな、伏せて下さい!!!」

 何かを感じ取ったらしいイエローが全力で叫ぶ。次の瞬間。
 トキワの城のアマリロの居室と同じように、小屋の屋根が完全に吹き飛んでいた。
「ワタル…!!」
屋根が吹き飛んだ後、イエローがすぐに立ち上がり、上空を睨む。そこにいたのは…。

「…って…えっ…!!?」
その声を誰が発したかはわからない。

 そこにいたのは既に…ワタルではなかった。

「そんな…既に最終実験は、済んでたってわけ!?」
ブルーが呆然として上空を見上げる。そこではハクリューと融合したらしいワタルが、自
身の力として、空に浮いていたのだった。
「甘かったな、マサラのブルー」
別の場所にも合成装置が作られていた事を推測し、ブルーは歯噛みした。
「でも何の目的で、四天王のボス自らがキメラになるっていうのよ!?」
「―さぁな? 自分で考えたらどうだ。それがお前達の得意技だろう…俺達をここまで追
いかけてきたお前達には、正直。敬意を表する」

「…何がどうなっているんです? あれは、ワタルなんですよね?」
それにボクのこの体は…。何も事情がわからないイエローに、ゴールドどクリスが慌てて
事情を説明する。
「…というわけで、四天王が研究させた合成獣の技術を使うしか、イエローさんを助ける
方法はなかったんです」
「でも一足先に、ワタルの奴も自分とハクリューを融合させてたみたいなんだ。何が目的
かはわかんねーが…」

「一体何をするつもりなのよ!? アンタ達は!!」
プレッシャーに耐えかねて叫ぶブルーに、ワタルはふふんと笑った。
「そうだな…。では、そろそろ教えてやろう。―キクコ」
後ろに浮かぶ影に指示を出す。ワタル自身もあるポケモンを場に呼び出す。それはカツラ
から奪われたミュウツーというポケモンである事に、ブルーだけが気付く。
 …次に起こった事は、全員の理解を越えたものだった。
「ついに揃った…マサラの血と、トキワの血。覚悟はいいかえ? ワタル」
キクコが取り出した円盤状の道具が眩い光を放つ。目を開けていられない程ではないが、
強い光だ。
「…―!? レッドさん!?」
「…ああ…!?」
光がプテラと融合したレッドを捕らえ、ワタルの方に引き寄せていく。ワタルがつい先程
呼び出したミュウツーも光に捕らわれ、ワタルの方に引き寄せられていく。


「そんな………まさか……」

 ようやく光が収まった後の場には。
 ミュウツー、レッドを取り込んだらしい、ワタルだったモノが。プテラの翼をはためか
せ、足代わりのハクリューの体を振り…ミュウツーの両腕を組んで、イエロー達を見下ろ
していた。


「レッドさんが……ワタルにとり込まれた……?」
イエローは愕然として。それだけやっと、口に出したのだった…。


「―ふむ。どうやら3属性の合成というお前の提案も、伊達ではなかったようだな」
顔と胴体だけはワタルの姿をしたものが、キクコに目を向ける。それを聞いてようやく、
ブルーは思い当たった。
「そんな…レッドさんはどうなったんですか!!?」
イエローが真っ青な顔をしてワタルの方を見る。今にもその背のフリーザーの翼で飛んで
いきかねないので、ブルーが手を上げてイエローを制した。
「…まさか…こんな所で、アレに出会うなんてね」
「―ブルーさん?」
「以前レッドに、3つの属性を1つのポケモンの中に合成する研究の話をきいた事がある
の。レッドはその研究の犠牲になった、イーブイというポケモンを可愛がってたわ」
今はマサラに置いてきているが、レッドの手持ちポケモンの中には元々そういうのがいた
のだ。
「やっとわかった。マサラの血とトキワの血の意味…今のあいつは、本当の化け物よ。本
当に…多分最強の、化け物だわ」

 化け物とはご挨拶だな、と、上空でワタルが笑ったようだった。
「“ポケモンに心を通わせる”マサラの血と、“ポケモンの心を読む”トキワの血。この
2つが揃ってこそ、ポケモンと人間の完全な意思疎通が可能になる。そして3つの属性に
分かれた3つのポケモンを合成する、かの道具」
キクコが取り出した円盤状の道具がそれにあたる。この場合、ハクリュー&ワタルとプテ
ラ&レッドの合成獣とミュウツーを、その力で無理やり融合させてしまったのだ。
「そしてマサラの血と、この俺のトキワの血があれば。融合に融合を重ねたこの体も、俺
の思い通りに扱える…」
ワタルがぱちっと指を鳴らす。するとイエロー達のまわりに、いくつかの人影が現れた。
「シバ、カンナ、キクコ。邪魔者を全員始末しろ」
彼らは全て、四天王。イエローとレッドを襲ったカンナ、この事態の黒幕らしいキクコ、
キクコにどうやら操られているらしいシバ…ざっと姿を確認して、ブルーは息を飲んだ。
こちらはブルー、イエロー、ゴールド、クリスの4人。あちらも、ワタルを含めて4人。
しかしレッドを欠いた全くの同人数対戦では、正直勝てる相手ではない。レッドはあちら
側についたも同然なのだ。


「トキワの血を持つって…それは、どういう事なんですか?」
不意にイエローが、上空のワタルに向かって呟いていた。
「ワタル。ホアンは確か、ガーディアンの事を話す時にあなたの名前を言っていた。あな
たがトキワのガーディアンの事を知っているのは……あなた自身も、ガーディアンだった
から?」
つまり、ワタルもトキワの力を持った者。ポケモンの心を読み、傷を癒す事の出来る…自
分と同じ力を持った、森のガーディアンだという事。
「…察しがいいな。その通りだ」
ワタルは楽しそうにイエローを見て言った。イエローは逆に、途方もない怒りをその目に
宿している。
「じゃあ何で!! 何でこんな事をするんですか!? トキワを攻めたりホアンを殺そうとし
たり、レッドさん達を無理やり自分に取り込んだり!! 森はそんな事、トキワの森がそん
な事…望むはずなんかないのに…!!!!」
悲鳴なようなイエローの問いに、ワタルは少しだけ、遠い目をした。

「…お前に何がわかる。ガーディアンの自覚もないままぬくぬくと生きて、ホアンの居場
所を奪ったお前に。…何も守れないお前に、何がわかるんだ」
「…!!」
ワタルのその目に、一瞬息を飲む。
「―力が欲しくはないか? イエロー」
「…えっ?」
「…俺は、欲しい…」
そうしてワタルの脳裏に浮かぶのは……15年前の、カントー大旱魃。成す術もなく枯れて
いく森、酷使される水ポケモン達。人間同士の争いの醜さと、それに否応なく巻き込まれ
るポケモン達の悲劇。

「手始めはトキワの王座だ。そこから俺は、この世界全てを支配してやる」
そう言い切るとワタルは。四天王全員に、行動開始の合図を下した。


そうして全てがいきなりの展開。かなりの裏技で助かるイエロー(半ば詐欺師)
っていうかワタルファンの方々、もし読まれてたら本気でゴメンなさいー!!!!(汗)
ラフ絵を描いて「こりゃーとてもUPれないなぁ…」と断言出来てしまった程、
妙な生物と化さしてしまいました。ファンタジーのラスボスはゲテモノがお約束かと(オイ)
ワタルが嫌いとかそんなんじゃ無いですから; 寧ろわりと好きですよワタル。
三位一体ネタと合成獣ネタは、もう少し伏線とかはるべきだったと後悔しております。
正直めんどくさかったのです(爆) 今回はとにかく、説明不足な箇所が多過ぎですよね…。
精進しますと言いたいところですが、次話と最終話もこんな感じです(トホホ;)
………まぁ程々に、手直ししてきます〜(^^;)