その国は天にあった=\――この世界に古くから伝わる御伽噺だ。と言っても現在、
それを知る者はほとんどいないだろう。一部の妖精その他、考古学マニアを除いては。
 曰く。天からの使いは銀の翼と真昼の月を依り代とし、その身に触れようとした者は全
て例外なく、死神の微笑みに時を凍らせるだろう………。
 これは一説には、フリーザーというポケモンを詠った伝承だと考えられている。この他
にも世界には様々な伝承が存在しており、その全てに何らかのルーツを求めるのは、行き
過ぎた現実主義の悪い例だと人々は言う。

 しかし時には。その伝承を体現するような存在に、どんな偶然と必然の混在か、出会っ
てしまう者がいる事も隠しようのない事実なのだった。

「………やれやれ………何処まで逃げるかと思えば、もう交差点まで来ちゃったわけか」

 蒼い月光に照らし出され、暗い空の下で幾枚もの黒い翼を広げる、悪魔のような形をし
た背の高い青年らしき影。手に持つ長い道具のシルエットは、まるで死神の鎌のようで…
しかし、そんな不吉なイメージの容姿とは裏腹に、淡々として悪意の感じられない、陰が
ありながらまだ幼さの残った少年の声で楽しそうに笑う。

「往生際の、悪い奴…………多分死ななきゃ治らないかな………」

 浮かべた微笑みに全く悪意は感じられない。だからこそつまり、存在そのものが邪気で
ある悪魔の黒い影………戦うために創り出され、生のために死を纏う事でしか、自身の意
義を見出せなかった出来損ないの旧い兵器。

 彼が惹かれるのは、滅びの定めにある存在にのみ。…彼がそれを知っていようと知って
いまいと、彼に深く関わる者は、近く滅びを迎える運命にある。……それなら彼に出来る
事は……どれだけ何を願おうと、たった一つだけ。

 永遠に彷徨う死神の定めに。嵐と同時に静寂を引きつれ、青銀の翼が狂海の孤島に白く
降り立つ。


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P.S.Legendary                          -漂流編 EXTRA-
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「―――やっと晴れたな!」
「―――晴れましたね!」

 久方ぶりに訪れた雲一つない晴天の気候に、レッドとイエローは顔を見合わせてから、
やったーーー♪ とばかりに両腕を上げて、ようやく海を渡れる事への喜びを表す。
「本当、一時はどうなる事かと思ったけどさ……まさかこれだけ毎日嵐が続くなんて、誰
も思わないもんなぁ」
「これでようやく、グレン公国に向かえますね! 双子島からこの無人島に流れ着いた時
にはボクもびっくりしましたけど…」
そもそもはグレン公国に向かう途中、突然の嵐によって双子島に漂着した2人は、その後
更に、何故か何の前兆もなく不定期で不自然な起こり方をする嵐に足止めされ、挙句の果
てには今度こそ誰も知らないだろう無人島へと流れ着いてしまった。地図に存在している
かどうかすら怪しい程の、不思議な生態系と自然植物に豊富であるような未開の無人島に。

 その島には沢山のポケモンが住んでいたが、人間という存在をほとんど知らないようで、
獰猛な上にとにかく数が多く、レッドとイエローは海岸沿いで始終火を焚いて過ごさなけ
ればいけなかった。ポケモンと心を通わせるマサラの人間であるレッド、ポケモンの心を
感じ取れる人間であるイエローの2人をもってしても、中々に打ち解ける事が出来ない程、
その島のポケモン達は人間という、未知の異物に警戒心を持っていた。
「この島のポケモン達と仲良くなれなかったのは残念ですけど…早くグレンへ行かないと、
もう結構時間が過ぎちゃってますものね」
「そうだな。下手したらカツラさんだけじゃなくて、オレ達まで行方不明って扱いになり
かねな……―――!?」
レッドがギャラドスを出して2人がその上に飛び乗り、よっしゃと島を出ようとしたその
時。
 まるでタイミングをはかったかのように、突然の大波がやってきていた。
「やばい、しっかりつかまれ、イエロー!!」
避ける事が出来ない以上、そのまま突き進むしかない。ギャラドスには大して痛手でない
事なのだが、その上にいる人間2人には相当なダメージとなるだろう。せめて振り落とさ
れないようにするのが精一杯だった。
「どうして、さっきまであんなに晴れていたのに…!!」
その大波を筆頭に、突如として黒い雲が空に現われ、海の動きが段々と荒くなってきてい
た。

「さすがにコレは何かおかしい…! まるで何かが、オレ達をこの島に閉じ込めようとし
てるみたいだ…!!」
―レッドのその声に呼応するかのように、再び舞い起こる暴風と突然の雷雨。さすがに岸
に引き返す事しか2人には出来なかった。…が、しかし。
「あの雲…この島の奥から急に出てきたようにボクには見えました。レッドさんは…?」
「オレにもそう見えた。それに今、こうやって岸に帰ってみると、段々嵐が弱くなってい
くようにみえて仕方がない……どうやら、この島を出ようと思うなら、この原因をつきと
めなきゃいけないみたいだな。………危険かもしれないけど………」
それでも、イエローが言ったように原因が島の奥にあるかもしれない以上、最早砂浜で晴
天を待つだけでは何も解決はしないだろう。人に馴れていない屈強なポケモン達がうじゃ
うじゃしている島の奥へ、危険を承知で、踏み込まなくてはいけなくなったようだった。

「森に入るにしても、せめて川を辿って奥へと進もう。こんな深い森で前みたいに迷って
る程、オレ達はもう暇じゃないからな」
「そうですね。川沿いなら水も食料も多分不足しませんし…」

 そんな感じで、森の中へと踏み入り始めた2人の気配に。
「……………………はァ…………………」
やはりこうなってしまったか……と、溜息をつかずにはいられないある人影と。

「…………ちょうどいい…………獲物が、やってきた…………」
暗闇の中、キラリと光る刃物のようなものを持つ人影と。そのどちらの存在にも、今の2
人が気付ける由もない。

                                       *

 木々の生い茂った森の中、川の流れに逆らう方向に奥へ奥へと進むにつれて。2人は、
この島のポケモンが何故未知の異物をあれ程までに警戒していたか、その理由を目の当た
りにしていた。
「ヒドイ……こんな事一体誰が………!!」
行く先々で、茂みの中に傷付いてぐったりと倒れているポケモンと、それを取り囲む仲間
らしき殺気立ったポケモンという光景があった。手当てしようにも周囲の殺気だった仲間
達が2人を近づかせようとせず、かといって戦えば、その仲間達まで傷付ける事になると
いう本末転倒な事は、さすがに出来ない。幸い、傷付いているポケモンは致命傷ではない
ようなので、せめて2人は心ばかりの食料と、それに密かに傷薬を含ませて置いて去った。
「にしてもこのままじゃ、俺達もいつ襲われるかわからない…イエロー、一旦海辺に戻ら
ないか?」
「でもあの雲の原因をつきとめないと、いつこの島から出られるかわかりませんよ?」
「この森の奥には、あくまで2人で行こうとすると目立ち過ぎるかもしれない。俺一人な
ら外に出しておくポケモン達も少し減らせるし、だからイエローを海辺まで送って、そこ
から俺一人で今度は森に入るよ」
野生ポケモン達の急襲を避けるため、今は2人の周りに、1人あたり2匹ずつポケモンを
配置しながら前に進んでいた。
「そんな、ダメですよ、レッドさん1人でなんて危険過ぎます!」
「でも今は一刻も早く、あの雲の原因をつきとめな………――――あっ!?」

 これからどうイエローを説得したものか、悩みかけたその時だった。レッドはイエロー
の斜め前くらいになる方向の先の茂みに、今までと同じように傷付いて倒れている、しか
し周囲に同系統のポケモンは全くいない、1匹だけでうずくまっているポケモンの姿を認
めていた。
「あいつ、仲間がいないのか…!? 行くぞイエロー、助けてやらなきゃ!」
「はい!」
急いで駆けつけた2人だったが……そのポケモンの姿を見て、周りに仲間がいない理由を
悟ってしまった。
「ひどい………斬りつけた上に猛獣に食いつかれたような怪我ですよね、これ……」
「ああ…それに凄い、貧血みたいな状態になってる。このままここに倒れてたら、死んで
たぞ…」
冷たい話かもしれないが、そのポケモンの傷は、仲間が守っていればいつか回復するよう
なものではなかったのだ。イエローが急いでいつもの力で治療するが、それでもそのポケ
モンを完全に回復する前に、先にイエローがまいってしまう程の大きな怪我だった。
「………ごめんなさい、レッドさん……後、もう少しなのに……」
「気にするな、これから休める安全な場所をちゃんと見つけるから。それまで辛かったら
寝てていいんだぞ、イエロー」
あまり一度に沢山力を使うと、イエローは疲れて眠りに入ってしまう。レッドの背中で既
に少しずつウトウトしかけながらも、眠りに落ちる事を拒否するかのように話を続ける。
「あのコの気から、ほんのちょっとだけわかった事があります……まだあんまり、ボクに
心を開いてくれてないから、ちょっとだけしか見えませんでしたけど……」
今はレッドの隣を歩くニョロポンに背負われたそのポケモンは、血が足りず傷が治りきっ
ていないのでグッタリしているが、自身を襲った何者かの姿をちゃんと覚えていた。
 イエロー曰く、その何者かは。暗い森の中、突然そのポケモンに斬りかかり、大怪我を
負わせた上に、その傷口にがばっと噛み付き、恐ろしい事にそのポケモンの血を啜ったの
だ。
「背の高い……青っぽい短い髪で、剣を持った男の人………その人があのコを…………」
言葉は続かず、結局眠ってしまったイエローだった。レッドはお疲れさん、と優しい笑顔
をイエローに向けながら、油断はせずにそのまま森を歩いていくのだった。

「……お。あの洞窟なんか、ちょうど良さそうだよな」
入り口が小さく、中型以上のポケモンは入れそうにないが、人間には十分な大きさの横穴。
勿論、レッドとイエローが連れているポケモン達はボールに入れれば済むだけなので、後
の心配は、洞窟内に毒蛇などが隠れていないかどうかという事に尽きる。

 そうして、安全を確かめるため、洞窟内に入ったレッドがピカチュウにフラッシュを使
わせた瞬間。
「………きゃっ……!?」
突然の光に驚いたらしい声が洞窟に響く。先に誰かがいた事にレッドも十分驚きはしたが、
洞窟に入った時に何か、生き物の気配は感じていたので、その姿を確認出来た事には少し
ほっとした。
 ……が。
「え………女、の人……?」
洞窟の奥で眩しげに両目を手で多い、ぺたんと座り込んでいる、旅人らしき風体をした女。
自分やイエローよりは年上そうだが、それでもおそらく同年代に囲まれれば小柄であると
思われる体格の、紫のセミロングのストレートな髪を持つその女性に、何故かレッドは…
…近づいてはいけない。その直感に、イエローを背負ったままの状態で立ち尽くし、駆け
寄る事が出来なかった。

「あ……あのー……大丈夫、ですか?」
「…………あなた達…………誰?」
やっと光に慣れてはきたものの、まだ眩しいらしくしかめっ面のように細めた目を2人に
向けた女性は、警戒心は満点といっていい調子の声で、静かにレッドに問いかけていた。
「誰って言われても…俺達はたまたま、漂流してこの島に流れ着いただけの旅人なんだけ
ど」
「………そういう意味じゃないわ。………こんな光を一瞬で生み出せるケモノを従えるあ
なた達は………一体何者なの………?」
「――――――は?」
 その問いがあまりに当たり前の事だったために、レッドは二の句が告げなかった。

 ポケモンとポケモントレーナー。この世界では当たり前過ぎるその存在を、この女性は
知らないという。確かにこの島にはほとんど人間がおらず、ポケモン達もトレーナーとい
う存在を知らないようで、自分達だけで生き抜いてはいる様子だったが……それでも、こ
の誰もいない島で生まれ育ったのでもない限り、ポケモンという当たり前の単語を知らな
い者は存在しないだろう。
 …あくまで、その女性が。この世界の存在であった場合は、なのだが。



「えーっと…とりあえずオレ達は、嵐でこの島に流れ着いてから、何でかずっと天候に邪
魔をされて目的の島に向かえなくてさ。その原因を探るためにこうして森の奥まで来たん
だけど、その事について、何か心当たりとかないかな?」
その女性がこの島の住人なら、何か知っているかもしれない。見たところ自分達と同じ、
旅人風の姿をしているので、正直あまり期待せずにかけた問いだったのだが。
「……あなた達も閉じ込められているの? 全く…あの悪魔は一体、何を考えているのか
しら。もしかしたらこの島にいる者全て、決して外の世界には出さない気かもしれないわ」
女性の答えは、意外というレベルをはるかに越えており、またしてもレッドは途方に暮れ
る事になった。
「あ…悪魔?」
「――わかっていないの? あなた達がここに辿りついたキッカケの嵐も、外へ出ようと
するのを阻む天候も、全ては悪魔の力によるものよ。その悪魔を倒さない限り、これから
先も、外へ出られる事はないでしょうね」
…………。一体全体、何処までその女性の話を本気にしてもいいものなのか……。悪魔と
いう存在がそもそも、この世界では認知されていない。妖精や妖怪といったものは、ポケ
モン達のように様々な生態系の一つとして一応存在を認められているが…お伽話に出てく
るような、特に人間をよく襲う魔物や悪魔といったものは、今のところ確認された事がな
いのだ。

「………。……そういえば、アナタはどうしてここに?」
とりあえず自身の理解の外にある問題は、後で考える事にしておいたレッドだった。
「………」
女性は正直、あまり自分の事を詮索されたくないようだった。そもそも話がしたそうなわ
けではないという空気はレッドも気付いていたが、それでもある程度、得なければいけな
い情報があった。見知らぬ土地で情報というものがどれだけ大事なものであるか、旅をし
てきた時間の長いレッドは、嫌という程わかっていたから。
「………。私は、ヒトを探すために、ずっと旅をしているの。でも最近は、ちょっと疲れ
てしまったかもしれない。…どうせ絶対見つからないって、わかりきっている事だし」
「……えっと。アナタの言った『悪魔』とは、アナタは何か関係が?」
「…そうね。アイツは元々、私を追いかけてここまで来たんじゃないのかしら。私はアイ
ツの事なんてさっぱり全然知らないっていうのにね…あなた達もとんだ、とばっちりね」

 ……。…何故だろう…この女性は、おそらく大事なことはあまり語りはしていない。初
対面のレッドに対しては当たり前の事で、それより不思議だったのは、それでも話してい
る内容自体には、嘘の匂いが全く感じられなかった事だ。浮世離れのした気品が何処かに
漂っていると共に、それでいて虚飾の気配がほとんどないのは、意外に微妙なバランスな
のではないだろうか。次期国王としてレッドは、彼女のように気品があるタイプの人間に
は、往々にして、心身共に自身を飾るのが当たり前である者にしか出会った事がなかった。
「そういや、まだ名前、きいてなかった。オレはレッドで、こっちで眠るのはイエロー。
…アナタは? 言いたくなかったら別にいいけど」
「………」
気さくという程親しみの持てる感じでもない女性は、しばし考え込んでいた様子だったが。
「………ラティエル。……ラティエル・マルクシアス…」
どうしてなのか、とても哀しそうに、自身の名前を呟いていた。


「じゃあ話をまとめると、ラティエルもオレ達と同じようにここで足止めされて?」
「私は…別に、好きでここにやって来たから。特に行くあてもないし、外に出られないな
ら出られないで、それなりに考えはあるわ」
そう言うと女性は、最早レッドには興味を失ったかのように、そっぽを向いてペタンと地
面に座り込んだ。心なしか体調があまり良くないようで、他人をかまっている余裕がない
ような気配が感じられた。
「あー……あの、大丈夫?」
「………。あなた達こそ…そこで眠ってる女の子、随分と気が弱ってるみたいじゃないの。
連れてる動物もどうやら、万全な体調とは言えないみたいだし」
そこでレッドははたと、イエローを抱えたままであった事を思い出した。元々イエローが
軽い事もあるが、もう背中にその重さが馴染んでいるのだ。何か大した事がしてやれるわ
けではないが、携帯用の毛布を敷いた地面に大人しく寝かせる。
 それが終わると、今度はモンスターボールを取り出して、先程保護したポケモンの様子
をみた。
「―あれ? 意識は戻ったみたいだけど、何かえらく怒ってんな、こいつ……」
あくまでボールの中ではあるが、そのポケモンは全身の毛を逆立てて、ボールを壊さんば
かりの怒気をみせていた。暴れる程にはまだ体調が回復していないようで、要するにこれ
は、元々この島のは人に慣れていないポケモンだったし、不可抗力な状態でボールに入れ
られた事への怒りなのだろうかとレッドは思った。イエローが起きたら一応もう一度、気
を読んでもらう必要も勿論あるだろうが。

「それにしても……悪魔、か……」
今まで見てきた、沢山の傷ついたポケモン達の事を思う。あれも悪魔とやらの仕業である
のだろうか…。もしもそうなら、自分達が島から出るためだけでなく、そんな存在は放っ
てはおけない。
 ―ちょうどレッドがそのように思いながら、一番奥にいるラティエルと、壁の近くで寝
かせたイエローの間に立った時の事だった。

「………見つけた………」
それは本当、誰にとっても不意のタイミングで。

「――――なるほど、ね。急に気配がわかり易くなったと思ったら……」
「―――!!!」
近づくヒトの気配など全く感じさせずに、その青年は、狭い洞窟の入り口をよいしょとく
ぐると。中にいる3人+@をあっさり視界に捉えていた。
「人化を解いた上に、何の防御もしてない人間と一緒にいるなんてね。やっぱしオレも、
戻って正解だったかな…同族の気配は同族が一番、感じ取りやすいってね」
青年はそれ以上近づいてはこず、代わりに入り口を塞ぐ形で、ラティエルだけを見据えて
相対していた。
「何、さすがにもう逃げるのは諦めた? それともただ単に……」
「っ……!!」
まだ青年との間にかなりの距離があるにも関わらず、明らかにラティエルは全身を強張ら
せている。対して青年は、あくまでけらけらと、数年来の友に話しかけるような気安さで
入り口にとどまっている。

「―そろそろ限界が近いんじゃない? いい加減諦めて、大人しくお縄につこうよ本当」
にっこり笑って最後通告。そんな状態ですら、何故か全く悪意を感じさせない青年だった
が、ラティエルのあまりの怯えように、見ているだけなど出来るわけのないレッドだった。
「待てよ! いきなり現われておまえ一体、何者なんだ?」
およ? という感じで、今までレッド達をあえて追求対象外に置いていたらしいその青年
は、見た目は自分とそう変わらない年齢っぽいレッドに視線をうつす。
「そういうオマエこそ何者なんだーって思うんだけどさ。オレは……この世界で言えば、
そうだなぁ、何になるのかなぁ」
一部意味不明な事を口にしつつ、青年はううんと腕を組んでまでマジメに考え込む。

「魔族、死神、吸血鬼……まぁひっくるめて、悪魔とでも呼んでもらえばアタリなんじゃ
ない?」

 全く事実だけを口にしている、悪気の無さ過ぎる青年のその言葉の内容には。
 現在のレッドにとってはあまりに、無視出来ない要素がひとまず多過ぎた。
「吸血鬼……悪魔……!?」
思い出すのは先程保護した、怪我と貧血で今にも死に掛けていたポケモンの様子と………
イエローがそのポケモンから読み取った、「背の高い、青っぽい短髪の男」という犯人像。
青年は幼い顔つきをしてはいるものの、レッドより背が高く、背中越しに見える入り口か
ら差し込んでくる白い月光が、青年の短い青銀の髪を殊更に妖しく際立たせていた。

―コイツが…あのポケモン達を傷付けた、悪魔……!

 …知らず、レッドは冷静さを失っていた。ラティエルとこの青年の事情に関しては、彼
は全く部外者であるにも関わらず……そしてその判断は、数刻後に彼の命を救う事を、今
のレッドが知る由もない。



To be continued.

……出しちゃいましたよAtlas'キャラクター。 本気でやってしまいましたよこのヒトは。
女の方は外伝からという何とも中途半端なキャラですが、青年の方はしっかりちゃんと主役の一人……
の、かなり後々の姿という事で。外見的には17歳程のイメージなのです。Atlas'本編では13位の姿です。
うーん…そういやPSLでは、レッド達の年齢設定はしてませんでしたよね。少年少女として扱ってるけど。
学年誌でも目まぐるしく成長してってる彼らだし、PSL世界ではレッド→16歳位にしといて下さいと、
たった今この場で決める無責任さ(^^;) 16位まではギリギリ少年と呼べるという事で(笑)
女の方の外見年齢は全然決めてないのですが、小柄な割に貴族然としたレディというのが理想です。
見ての通りまだ続きますので、良ければアタタカイ目で見守ってやってください。ではでは…。
後編へ。